プロセス・セーフティ・マネジメント(PSM)の適用は、危険度の高い生産施設、とりわけ危険等級I・IIの施設における産業安全確保の要となる部分です。
PSMの基本原則は普遍的です。もともと生まれた化学産業だけでなく、他のあらゆる業種でも十分に活用できます。
PSMとは、管理・統制のための道具立て(規格、手順、プログラム、点検、試験、評価、監査)から成る組織的な仕組みです。
概念的には、PSMは相互に関連する14の要素(OSHA 29 CFR 1910.119)から構成され、大きく三つの群に分けられます。
- 人:従業員の参画、要員の教育訓練、請負業者の管理、火気作業許可、事故・インシデントの調査、緊急時対応の備え、監査と点検、営業秘密の保護。
- 技術:プロセス安全情報、プロセス危険性解析、運転基準と手順、変更管理。
- 設備:始動前安全レビュー、設備の機械的健全性。
分析ツールとしてのPSMは、既存の産業安全要求に対する明白な違反にとどまらず、はるかに多くのものを見つけ出せます。
PSMの最大の長所は、重大事故・破局的事故の前提条件をつくり出す系統的な弱点を、あらかじめ洗い出して取り除ける点にあります。
この文脈で想起すべきなのが、ロシア水力発電史上最大の事故です。2009年8月17日、サヤノ・シュシェンスカヤ水力発電所で発生しました。
この事故で75人が亡くなりました。さらに13人の作業員が負傷しています。経済的損害は70億ルーブルを超え、その後の発電所復旧費用は400億ルーブルを上回りました。
何が起きたのか
- 出力を制御しながら再び下げていく過程で、2号水車発電機(第2号機)は通常の運転範囲を外れ、振動が大きくなる領域に入りました。
- 流入する水の圧力によって第2号機のロータが上方へ動き始め、水車カバー固定用スタッドボルトが破断して、機器の密閉が失われました。
- 圧力を伴って流れ込んだ水は、機械室をはじめ発電所の他の建屋や構造物を短時間で水没させ、破壊しました。
調査の結果、事故の直接原因は、振動増大のため推奨されていない運転領域へ第2号機を再び投入した際に、水車カバー固定用スタッドボルトが破断したことであると認定されました。
事故の状況と原因をPSMの観点から分析すると、プロセス安全管理における系統的な欠陥の集合が浮かび上がります。紙幅の都合上、ここでは古典的なPSM要素に沿って、特に重要なものだけを挙げます。
要素「プロセス安全情報」
そうした情報は発電所に存在していましたが、明らかに不完全であり、事故のはるか以前から形成されていた実際の状況を反映していませんでした。
- 水力学的な現象による圧力脈動や機器の振動増大を排除するための、第2号機水車の安全運転限界が定められていませんでした。
- 連続振動監視システム(安全上きわめて重要な設備)は第2号機で運用開始されておらず、出力調整の判断にも考慮されていませんでした。
- 水車および固定部の密閉性を確認するための要求事項が定められていませんでした。
- スタッドボルトやその他の固定要素に対する定期的な非破壊検査も予定されていませんでした。
要素「プロセス危険性解析」
以上のことから、この解析は安全上きわめて重要な設備、制御・監視手段を十分に対象としていなかったといえます。その結果、実際に適用されていた防護措置の組み合わせは、発電所の現実の状況と生じつつあるリスクに対応しないものとなっていました。
要素「緊急時対応の備え」
- 非常事態の予防・収拾計画には、発電所建屋が浸水するシナリオが盛り込まれていませんでした。
- そのため相応の訓練は行われず、水面標高より下の階を含め、請負業者の避難も想定されていませんでした。
- 運転連絡用の通信手段と非常警報設備は、事故の最初の瞬間にはすでに機能を失っていました。
要素「運転基準と手順」
- 運転文書には、第2号機の密閉を担う固定部の状態と使用年限を管理するための要求事項が定められていませんでした。
- その確認は定期作業の際に目視で行われるだけで、非破壊探傷の手法は用いられていませんでした。
- 特徴的なのは、スタッドボルトのナットの緩み止めが、機器の施工文書で義務づけられていなかったことです。
要素「請負業者の管理」と「変更管理」
- それ以前に発電所にあった補修部門は解体され、要員は子会社へ移されました(アウトソーシング)。
- その際、発電所設備の技術状態を定期的に点検する体制をどう組むかという問題が、置き去りにされました。
要素「設備の機械的健全性」
- 2号水車発電機が突然密閉を失う前提条件は、長期間にわたって存在していました。それを物語るのが、水車カバー固定部に生じた疲労損傷です。振動と、運転が推奨されない特性領域を繰り返し通過する際の過大な荷重によって生じたものです。
- 事故後にこれらの固定部を調べたところ、一部のスタッドボルトにはナットがちぎれた痕跡が見当たりませんでした。これは、第2号機が密閉を失った時点で、そもそもナットが取り付けられていなかったことを示しています。
📌 結論
- よくあることですが、破局の前提条件は、事故のはるか前から少しずつ積み重なっていきました。それらは一つずつ技術責任者や現場の目の前に現れていたのに、重視されませんでした。ある時点で事故は不可避となり、あとはその時を「待つ」だけになっていたのです。
- 上に挙げた欠陥はすべて、サヤノ・シュシェンスカヤ事故の系統的原因に分類できます。
- その根本原因は、プロセス安全管理の組織運営に、練り上げられた系統的アプローチが欠けていたことです。
- PSMの原則を適時かつ的確に適用していれば、この惨事は防げたはずです。
- 最も重要な教訓の一つ:この種の施設をはじめとする危険な生産現場で、PSMのアプローチを無視することは許されません。それは日常の管理実務の一部となり得るし、ならなければなりません。
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