大企業における労働安全文化の発展は、基本ルールの導入から行動への深い働きかけまで、必然的にいくつかの段階を経ます。タチアナ・ボブロヴィツカヤは講演の中で、Shell社のアプローチの変革の道のりを詳しく解説しています。1990年代以降、統一基準(Control Framework)と命を守るルール(Life-Saving Rules)の導入により、負傷率を劇的に低下させ、2014年までにゼロを達成しました。しかし、2019年のインシデントがきっかけとなり、確立された慣行が見直され、悲劇を防ぐには指示やリーダーシッププログラムだけでは不十分であることが認識されました。
講演者はグローバル戦略を例に、管理統制から従業員支援へと焦点がどのように移り変わっているかを示しています。新しい哲学は以下の3つの要素に基づいています。
最も目立たないものの重要なステップの1つは、重要業績評価指標(KPI)の見直しでした。講演では、記録可能なすべての軽微なインシデントの集計をやめ、重大なインシデント、死亡事故、および潜在的重大インシデント(High Potential Incidents — HPI)のみに焦点を当てることへの移行について詳しく説明しています。この決定は、従来の負傷ピラミッドが常に正しいとは限らないという事実に基づいています。多数の軽微な負傷が必ずしも大事故の可能性と相関するわけではありません。焦点を移すことで、高所からの落下物など、真に重大なリスクの深い調査と、質の高い教訓の抽出に会社のリソースを向けることができます。
この変革は、命を守るルール(Life-Saving Rules)の違反に対する姿勢にも影響を与えました。以前は「違反すれば解雇」という厳格な原則が適用されていましたが、現在では公正な対応(Fair Event Handling)のアプローチが導入されています。講演者は、現在の調査の主な目的は従業員を罰することではなく、違反を引き起こしたシステム上の要因を特定することであると強調しています。これにより、従業員の信頼を維持しながら、システム自体を「修復」し、根本原因を取り除くことができます。